CFRPは宇宙機器分野で多くの研究がされており、ロケットや人工衛星の一部には、すでに様々な材料が使用されています。
中でも人工衛星には、太陽電池パドル、アンテナ、構体など、多くの箇所に用いられていて、ハニカムコアという構造で軽量で強度がでるような技術も用いられています(図1,図2)。
なお,ハニカム材料はアルミあるいはノーメックスという樹脂製が多いですが,CFRP製というものも宇宙用には用いられることがあります(図3)。
図1 温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」1)
図2 アンテナ反射鏡パネルの構造事例
図3 CFRP製孔付ハニカムコアの例 2)
H3ロケットのフェアリングでは、アルミのハニカムコアの上にCFRPを自動積層したり、結合部分にはボルトを用いずCFRPの板を接着剤でつなぎ合わせる技術を用いてるんだよ(図4,図5)。
脱オートクレーブの技術で「Out of Autoclave(OoA)方式」とも呼ばれています。

CFRPを使うことで、組立技術も進化しているんだね。
図4 ロケットの種類(左からH-Ⅱ、H-ⅡB、H3)3)
図5 衛星フェアリング
航空宇宙分野では、軽くすることで多くのメリットが得られるので、さらに複合材料を取り入れようと、研究開発がなされています。
複合材の、特に樹脂には様々な種類と性質があり、異なる種類の配合や化学反応等で目的に合う樹脂を作ることができるので、研究が活発に行われています。
例えば、宇宙のような過酷な環境では、高靭性と高耐熱性を兼ね備えた樹脂が必要で、その研究がされており、NASAがPETI-5という樹脂を、JAXAがTri-Aという樹脂をそれぞれ開発し、さらにこれらを基にした研究が続けられています。
図6 樹脂の2つの開発方向:高耐熱化と高い力学特性の両立4)

樹脂は開発できたのに、さらに研究するのはどうして?
製品を作る上では、材料の性能が良くても、成形や加工が容易かどうか、コストはどうか、扱いやすいかというのも重要で、実際に試作して問題点があれば改良する必要があるからなのです。さらに良い性能の樹脂も開発したいですしね。
また、高耐熱性を得たいけれど、取り扱い上のメリットのためか、熱可塑性樹脂を取り入れてるというところも面白いですね。
このように高耐熱性の樹脂が開発されていくと、将来的には、常に高温環境にさらされるエンジン周辺部位にもCFRPまたは他の複合材が使われていくようになるかもしれませんね。
出典:
1)JAXA HP:
2)宇宙機器における複合材料 田中長博 表面技術
3)JAXAにおける宇宙輸送に関わる取り組み 沖田耕一
https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/content/000036409.pdf
4)航空宇宙用複合材料の新展開 石川隆司 高分子55巻11月号(2006年)